「THEATRE MOMENTS」の佐川大輔さんにお話を伺いました!


 まず最初に、MOMENTSはどんな芝居を作っているんですか?

 
そうですね。ちょっと他と違うのは、私たちは「トータルシアターカンパニー」というところですかね。

トータルシアターですか?ちょっと聞きなれない人もいるかと思うのですが、一口に「トータルシアター」というと?

 
実はここの定義づけっていうのはまだ曖昧なんですが、一言でいうと、ストレートプレイの概念から外れ、「演劇ならではの要素を最大限活用した創作」と言えると思います。僕らは、映像作品ではできないことや、ダンスや音楽のライブでもできないことをやるカンパニーと思っています。そういう意味で「総合芸術である演劇表現」をしています。こういう話をすると、突き詰めると「演劇って何?」ってことに行きつくんですが、そんなこと一言では言えないでしょ?だから定義が曖昧なので、言いづらい。ま、現在もスタイルは模索中でもあるんですけどね。

その中でMOMENTSの「こだわり」、もしくは「オリジナリティ」と言えることはなんですか?

 
主に3つです。「ライブ性」、「アイテム(小道具)」、「身体性」ですね。





では、一つ目の「ライブ性」とは?

 
演劇って、お客様と一緒の空間を共有するものだと思うんですよ。劇場という空間で「100分一本勝負!」という緊張感を、俳優と観客が共有する。これは家でテレビを見たり、DVDを見るのとは違う。その「演劇ならでは」な点を重視しています。

でも、重視するといっても、お芝居ですからお客様が作品に参加するわけではありませんよね?

 
確かに直接的には参加はしません。でも、うちでは観客も作品の一部と考えます。例えば、ある作品では、芝居の中盤で客席に俳優が入っていくんです。「すいません、すいません」って言いながら。で、「こちらいいですか?」って、お客様の隣に座ってみたりして、しばらく無言が続くのです。その時の俳優の気まずい空気を感じ、客席には笑いが起き、不思議な一体感が生まれました。他にも、毎公演、開演前の前説で、観客と俳優で交流できる余興を行ったりと、ライブならではの交流、緊張感の共有をしたいと考えていま

二つ目の特徴は「アイテム」と言っていましたが、これはどういう意味ですか?ゲームの世界の言葉のような気がしますが?

 
うちではアイテムというのは「象徴的な小道具」という意味です。うちの公演では必ず1,2種類の小道具しか使わないで芝居を作っていくんです。ですから、小道具を絞り込んで、それを多面的につかうことで、テーマが象徴されてくるようにしています。





「小道具を絞る?」ちょっとイメージしづらいのですが?

 
例えば「落語」では、座布団に座った噺家さんが、様々な情景を演じます。その時に使う小道具は、扇子や手拭いぐらいです。扇子を刀にしたり、お箸にしたり、おちょこにしたり、といろいろと「見立て」ることで、観客の想像力を刺激します。同様に、僕らも舞台の上に状況を説明する椅子や、テーブルといった道具は置かず、見立てに使う小道具だけですべてを表現します。

扇子のようなものとしては、何を使うんですか?

 
僕らは作品ごとに使うアイテムを変えます。それはその作品のテーマと共通性が感じられるものにすることで、ただ見立てるだけではなく、そこに「テーマ」や「現代性」、「異化効果」を生み出そうと考えているからです。例えば、「マクベス」をやった時は「新聞紙」と「赤い糸」を使い、新聞紙で「剣」や、「魔女」、「情報」など、赤い糸で「血」や「絆」、「運命」といったイメージに使いました。

最後の「身体性」ですが、これは?

 
ま、これは言わずもがな、「俳優の身体」ですね。セリフ劇というよりは「身体」でイメージを表現する場面も入れています。ダンスというよりも身体表現です。僕は俳優の身体が舞台にあることへのこだわりがありまして。僕の考えとしては、「感情表現」も、「セリフのやりとり」も、突き詰めると「身体表現」だと思っているんです。





「感情」や「セリフ」も身体表現というと?

 
例えば、「泣く」のは、涙腺が反応する「生理的運動(衝動)」であり、その運動を通して、自らの意思を周りに伝えている。同様に、セリフも、声帯を震わせる筋肉運動を通し、他者に自らの欲求を伝えている。
 
ま、当然そこには動機や内面が存在しますが、結局は楽器として「俳優の身体」を通して表現される。だからうちではとにかく、俳優はほぼ出ずっぱりで、色々な表現をしつつ、空間を身体性で埋めていきます。俳優の身体が語るものって、すごく雄弁だと思うんです。

なるほど、3つの特徴、わかった気がします。

 
正直な話、言葉で理解してもらうって、難しいですよね。だから、演劇ってやっぱり体験するものだと思うので、僕たちのようにちょっと普通と違う芝居をやっているものとしては、とにかく観に来てもらいたいなと思います。ちょっと普通と違う創作をしていますが、僕たちは前衛ではなく、直感的にわかりやすい、イメージを伝える演劇を心がけています。どうぞ気軽に劇場へ足をお運びいただければ嬉しいです。

佐川さん、インタビューありがとうございました!





■ THEATRE MOMENTS
『空っぽの騎士 イタロ・カルヴィーノ「不在の騎士」より』
 会場/d-倉庫


【タイムテーブル】
2011年10
28日(金)
29日(土)
30日(日)
31日(月)
11月1日(火)
2日(水)
3日(木)
4日(金)
5日(土)
6日(日)
14:00
18:30
19:30

【チケット料金】
前売¥3,500 当日¥3,800 (日時指定・全席自由)
※学生料金、リピーター割りあり。詳しくはWebにて。

【チケット取り扱い・お問い合わせ】

THEATRE MOMENTS TEL:03-6760-9709

「THEATRE MOMENTS」Website