Special Interview Vol.032
ウンプテンプ・カンパニー インタビュー
ウンプテンプカンパニー インタビュー

































ウンプテンプ・カンパニーの谷 修さんに伺いました。



Q:ウンプテンプ・カンパニーについて伺ってもよろしいでしょうか?

A:はい、私たちは、2008年~2011年の3年間に渡り、5本の連続上演を行く事を約束した、期限付きの表現者たちの集まりなんです。
 もともとは上演実行委員会UMPTEMPで、2005年の上演した『恐るべき子供たち‐新たな世界‐』を皮切りに、プロデュース公演っていうか、一つの芝居のために役者・スタッフを集めて芝居をしていたんです。だけどいつの間にか、オフの時も集まって、舞台映像の鑑賞会を開いて焼き肉パーティしたり、喫茶店でだべったり、次の公演を計画するようになっていて。5回目公演で一つの区切りを付け、又やりたい人、いや、まだやりたい人でしょうか(笑)、を募って、2008年からはウンプテンプ・カンパニーと名を改め、活動していく事になったんです。
 なので、ウンプテンプ・カンパニーとしては4本目なのに、今回のd-倉庫公演が第9回公演という、ちょっとわかりずらい算え方になっているんですよね。


Q:なぜ3年で5本と期限と本数を区切って活動されているのですか?

A:遠い未来が予測できないからです。見える範囲の所だけでも、精いっぱいやりたい、それからのことはそれから考えよう、だから団体名がウンプテンプ(運否天賦)運を天に任せてみよう、という名前なんです。…でも、もしかすると、「運否天賦」って言葉は計画性の欠けている人間を励ましてくれる言葉かも、と思ってだんだん好きになってきました。二年前、カンパニーになるとき、団体名の言い出しっぺじゃないんで、(笑)違う名前も考えてたんですけどね


Q:なんて名前をつけようとしていたんですか?

A:たしか星座にちなんだ名前をつけようとしていました。だけど忘れました(笑)。時の流れって振りかえると短いですけど、その時は必死で、目まぐるしく変わっちゃいますね。毎日、同じ電車に乗って、同じ生活を繰り返すと、つい、平和で変わらないことが当たり前だ、未来永劫続くに違いない、って感じがしますが、ちょっとしたきっかけで、崩れ去ってしまう。「今」を留めたいばっかりに、永遠変わらない日常がある、なんて錯覚をしているのにすぎないのかもしれませんね。
 「今」という時代を切りとって芝居にしたいとは思うけれど、その「今」は揺らめいてなかなかよく見えない…。
 だから私たちは、すでに忘れつつある、前近代の関係の在り方や世界観を見つめ直し、今に生きる人間の物語として再構築していこうと試みています。複雑に制度化された近代を、シンプルな形にして上演するスタイルを私達は「ポストモダン演劇」と名付け、そのスタイルを常に模索しています。
 今回の「牡丹江非恋歌」もその一環なんです。すでに歴史の過ちとして葬り去られた、かりそめの国家、満州国を想定し、物語を紡ぎ出しました。
 そこに生きていた、肥大化した理想に翻弄されつつ、矛盾に満ちた現実に流されていく人間の姿を。または、人間の清らかな魂を求める精霊が、契りを交わした男に裏切られていく有様を、大陸を流れる牡丹江を下る外輪船を舞台に定め、多様な民族意識やイデオロギーを乗せて、人間の心の奥底でぶつかり合う清濁の根源を幻想的に描きます。

 それと、他ジャンルで活躍しているアーティストとの共同作業を通して、表現者のネットワークの拠点となるべく活動できたらなと思っています。今回はd-倉庫にピアノを運び込み、作曲の神田晋一郎さんが生で演奏してくださいます。ピアノの調べにのせて、人間の心の迷いという見えづらいものもお届けしたいと思っています。


Q:どうしてピアノの生演奏をd-倉庫公演で企画されたのですか? 搬入など大変かと思いますが・・・?

A:なにぶん、人ありきで企画しているもので(笑)・・・。作曲の神田さんとは初め、舞台設備にピアノが含まれる劇場での公演企画にお誘いしました。そこで役者と一丸となり、「驚きの音楽劇」というスタイルを生み出していったんです。第1弾に続き第2弾も好評を博し、また一緒に…。という素敵な流れになりました。芝居創りは非生産だしなんだかとても大変なのですが、単純なやろうって最初の気持を失わない、それがウンプテンプのポリシーかもしれませんね。
 なので、なるべく芝居造りの原則に従って、稽古場に役者が全員そろう、一緒に作品を創るスタッフにも稽古に立ち会ってもらい、共に作品を創りだしていこうよ、と拘り続けています。芝居創りにとって当たり前と言われている事を当たり前にやる。大事な事だと思ってやってます。初心をすぐに忘れて慢心しちゃうのが人だと……自分に戒めながら創っていきたいです。
 表現って、時が過ぎても、褪せない物を求め続ける、罪深いものだとつくづく感じています。


Q:最後に一言お願いします。

A:はい、では(笑)「わたし達は演劇という花束を手にし、まだ見ぬ人達と繋がろうとしています」そして、願わくば「牡丹江非恋歌」が多くの人と出会えますように…



 ウンプテンプ・カンパニーの谷 修さん、インタビューありがとうございました。

次回公演

ウンプテンプ・カンパニー 『牡丹江非恋歌

11/11(木)~11/16(火)

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