interview no.110  劇団SUNS
 

劇団SUNS
劇団SUNSは、劇団Ya-taro、劇団テンタムル、風鈴堂の3団体が、 それぞれの持っている人材・技術・資材を持ち寄り、 小劇場の枠を乗り越え、大劇場での公演へと挑戦し、 ダイナミックさと繊細さを兼ね備えた誰も見たことのない 新しいエンターテインメントを作り上げるために旗揚げした。 「Stand Up New Stage(新しい舞台を立ち上げよう!)」 をコンセプトに、一人ひとりが専門性の高い技術を発揮することにより、 ハイクオリティの公演を作り上げる事を目標としている。



劇団SUNSは劇団Ya-taro、劇団テンタムル、風鈴堂の3つの団体が合同で立ち上げた劇団です。劇団の起こりや運営の苦労などについて、代表の多田聡(たださとし)さんに伺っていこうと思います。

    どうしてそれぞれの団体での活動を休止して、劇団SUNSを立ち上げたのでしょうか?

多田聡(以下多田) 実はこの話の構想自体は随分前からあったんです。例えば風鈴堂の企画で、色々な団体が3週間連続で公演をするというのがあって。その企画に劇団Ya-taroも劇団テンタムルも参加してたんです。もちろん同じ舞台を作ったわけではありませんでしたが、その時に「一緒に芝居をやりたいね」という話になりまして。僕がテンタムルの本公演に誘ってもらったのが本格的に合同劇団を作るのきっかけになった出来事かもしれませんね。

    それが2013年11月の劇団テンタムル「ルー・ガルー」だったわけですね。

はい。公演後に当時テンタムルの主宰だった池内から合同劇団の話を持ちかけられました。彼も、テンタムルや他の団体が「行き詰まりを感じながら、行動に移せていない」という状況に悩んでいたようで。


    共感したと?

そうですね。合同の話を貰った当時、僕はあくまでYa-taroの一俳優だったので、Ya-taroの主宰だったタネムラに話を持ち帰ったんですね。タネムラとしても自分の劇団として長い期間続けていたので思い入れも拘りもあったので迷っていたみたいで。そんなときに風鈴堂の加古が仲介に入ってくれて、一緒に新しい劇団をやろうという話が一気に決まって行ったんです。

    多田さん自身に戸惑いやためらいは無かったのでしょうか?

無かったわけではありませんが、Ya-taroの人員が少なくなってきてた状況に行き詰まりを感じていたことも確かで。僕自身は劇団って言うのは団員が多くないとやりたいことが出来ないと思っていましたから。それはタネムラと意見が一致したところもありまして、最終的にGOサインが出たと。

    合同で劇団を作るとなると、それぞれに独自の習慣や考え方があったと思うですが。

僕の中では思ったよりも違いは感じなかったんですよね。多分Ya-taroにいた以前から多くの団体さんに客演をさせていただいて、それぞれの内部事情を見たり聞いたりと体感をしていたので、習慣や考え方に対しての受け入れがし易かったんだと思います。


    運営をしていく中での衝突もあったのではないでしょうか?

僕らの場合は「衝突」というよりも「精査」していったという感じですね。それぞれのメンバーが元の団体の、これは「やっていいこと」「やっちゃいけないこと」というのを自然に選んでいたからでしょうね。お互いに気を遣い合って調整をしていったという感じでしょうか。もちろん今もその作業を続けていっているところですけれど、僕自身は余り争いが好きではないので、この状態は凄くありがたいですけれどね。(笑)

    それでも考えが違うという瞬間もありますよね?

そうですね。例えば芝居の作り方でも考えの違いがありますよね。
ある俳優さんだと自分のライバルはだれだろう? って事から演技を考えたり、誰よりも目立ってやろうとか。
でも、僕は自分以外の人が敵だとは考えずに、共に高めあっていく仲間として一緒に舞台を作っていこう、と強く思うタイプなんです。だから他の人を敵だと考えたことがなくて。何が正解なのかって言うのは凄く難しいとは思うんですが、こういった考え方の違いは普通に起こってきますから。

    受け入れていくということですか?

それもあるかもしれませんね。特に僕は自分の意見を押し付けないようにすることで、一人一人が持っているものを発揮できる環境を作ることが大事なんじゃないかと思っているんです。
……まあそれと合わせて、もっと感情を出して言ったほうがいいぞ! 俺! と思います(笑)



    お茶目ですね(笑)。ところで話が少し戻りますが、劇団SUNSになる前はそれぞれの団体に代表が居たと思うのですが、そんな中で一俳優だった多田さんが代表になったのはどういった経緯からですか?

これは僕が感じただけなので確認したわけじゃないんですけど、それぞれの団体の代表だった3人は「自分たちが代表をやってきて、劇団を大きくすることが出来なかった」という気持ちが大きかったのかなというのが理由かなと。言い方としてはかなり率直な表現になりますけど、これまでにやってきた劇団は失敗をしてきて、その劇団なり団体なりを率いてきた彼らが代表になったら同じ失敗を繰り返してしまうのでは?というのが3人とも引っかかっていたのではないかなって。

    他の人ではない多田さんが代表になったということで、自分には何を求められていると思いましたか?

うーん……なんでしょうね?(笑) いや、そこに関してはいまひとつ恥ずかしくて聞いたことが無いんですけど、良い意味でも悪い意味でも自分の「適当」なところが良いって思ってもらえたからだと思うんですね。いろんなことに縛られて停滞していた自分たちには無い自由さ、みたいなところを買ってくれているんだと思いますからそれは大事にしていきたいですね。ただそれが、良い方だけに作用しているかというとそうでもないところがあって。

    話がまとまらないとか。

それが一番ですね。(笑) でも適当だからこそ! というところもあって。皆が劇団の運営に悩んでしまったときに「やってみないとわからないよ」って言えるのは僕かなと。その一言で皆が前に進むことが出来るのであれば、そういう時こそ適当であり続けたいですね。

    今後も「適当」な多田聡で行くということですね?

全てが適当って訳じゃないですけどね。自分がやるべきことを明確にして、不必要なところでは力をちゃんと抜く。その上で内側からも外側からも……こういう言い方で合ってるのかは分かりませんがナメられないようにちゃんとしていないといけないなと思います。自分も20代後半になりましたが、まだまだ若造ですから。

    やるべきことというのは?

今回の公演もそうですし、今後の公演を「成功」させていくことです。劇団を立ち上げてからまだ1年しか経ってないわけですけど、この1年でプレ公演に当たる「うしろの正面、だぁれ?」や、それぞれが客演として芝居やダンスの公演に参加して、みんな経験を積み重ねてきました。その積み重ねの上に今までで一番大きな公演を打つわけですから、必死ですよ。(笑) 僕たちはそれを絶対に成功させなくちゃいけない。

    プレッシャーが掛かりますね。

特に今回目指しているのは「自分が思う成功」ではなくて、関わってくれた方々が……物凄く欲張った言い方をするなら全員が「次も見たい!」って言ってくれて、関係者の皆が「次も一緒にやろう!」って言ってくれるような公演にしたいということですね。そのために全力でやりたいなと。

    前回公演の「うしろの正面、だぁれ?」の時と比べ変わったと思うところはありますか?

気持ちが全然違いますね。この公演が本当の第一歩目になるんだなというか……。前回公演は劇団SUNSで作る初めての公演だったので、確かにあれも第一歩ではあったんですけれど、僕が思うにスタートラインを引くための公演だったんだと思います。前回公演でスタートラインがしっかりと引けたからこそ「目指すゴールはここですよ」ということが分かった。僕がこの劇団SUNSの代表となんだという意識が高まってきましたしね。(笑)

    最後に読んでいる方々に一言お願いします。

僕の、そして僕らの劇団SUNSを知ろうとして下さっているというのが凄く嬉しいです。僕は何かをしてもらうことの方が多いので、それをきちんと返せるように精一杯頑張っていきます。そして観ていただくことで「輝いているな、こいつら。」と思っていただければ幸いです。

    ありがとうございました。

ありがとうございました。



次回公演

劇団SUNS
『Underground Blowout』
日程 > 2/12(木)~15(日)
tel. > 070-5563-9150
公演詳細 > 公式HP

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